(Jリーグ参考訳)
CAS 2008/A/1452 我那覇和樹 対 社団法人日本プロサッカーリーグ
日本国東京の東京駿河台法律事務所
弁護士 上柳 敏郎
によって代表される
上訴人我那覇 和樹

日本国東京の日比谷パーク法律事務所
弁護士 原 秋彦
によって代表される
相手方社団法人日本プロサッカーリーグ
との間の仲裁手続において


以下の構成によって開廷される:
委員長: Mr Malcolm Holmes公認弁護士、オーストラリア・シドニー、法廷弁護士

仲裁人: 小寺 彰、日本国・東京、教授、Dr Hans Nater、スイス・チューリッヒ、弁護士



スポーツ仲裁裁判所
によって下される
仲裁裁定
当事者
1. 「上訴人」は株式会社川崎フロンターレ(「川崎フロンターレ」)のプロサッカー選手である。川崎フロンターレは日本において「相手方」によって運営され「Jリーグ」として知られるプロサッカーリーグのチームのうちの一つである。「相手方」は、日本サッカー協会の傘下に設立された事業体である。

2. 日本サッカー協会は、1929年に国際サッカー連盟(「FIFA」)のメンバーとなった。FIFAは2004年5月21日の総会において世界ドーピング禁止規程(「WADA規程」)を受諾した。


紛争
3. 2007年4月23日、川崎フロンターレのチームドクターである後藤医師によって我那覇選手に対して静脈内注入が実施された。2007年5月10日、「相手方」は、この治療は「我那覇選手の健康状態の緊急且つ正当な医療行為として承認」することはできないと決定した。「相手方」は、2007年5月1日の「相手方」のドーピングコントロール委員会の会議においてなされたところの、本件注入は「WADA規程」を取り込んだJリーグの「ドーピング禁止規程」に違反するという事実認定に基づき、我那覇選手に制裁を課し、我那覇選手は6試合の公式試合の出場停止となった。

4. 我那覇選手に制裁を課す旨の決定は、当時の当事者間で継続していたやりとりの主題事項であり、また、日本のプロサッカーに関与し又は関心を抱くその他の数多くの関係当事者にとっての関心事項であった。我那覇選手は当該決定について争うことを希望したので、同人は、2007年12月6日に同人に対して課された制裁についてCASに上訴を申し立てることを決めた旨公表した。


CASの管轄
5. 2007年12月13日、我那覇選手と「相手方」は、公式の仲裁合意書を締結し、そこにおいて、両者は、スポーツ関連仲裁規則(「本規則」)に規定されているCASの手続規則に従って、主張されているところの我那覇選手のドーピング違反について「相手方」が2007年5月10日に課した制裁処分に対する我那覇選手の上訴を、仲裁による終局解決のためにCASに付託することが合意された。


手続
6. 2008年1月3日、我那覇選手は、その上訴趣意書を、スイスのローザンヌのCASの登録事務所に提出し、仲裁人として小寺彰教授を指名し、聴聞審理を日本において行うことを要請した。上訴申立書においては、我那覇選手は、「『上訴人』を6試合の公式試合の出場停止とする旨の2007年5月10日付で『相手方』によって『上訴人』に課された制裁の取消し」を求めた。「相手方」は、仲裁人としてHans Nater博士を指名し、2008年2月5日に「本規則」の第R55条に従って、上訴趣意書に対する答弁書を提出した。Malcolm Holmes公認弁護士が仲裁パネルの委員長に任命された。

7. 2008年2月14日付書簡により、我那覇選手は、聴聞審理において、3人(我那覇選手、後藤医師、上訴趣意書に記載された6人の鑑定人の中から1人の鑑定人)を証人として申請する意図である旨を通知した。「相手方」は、その答弁書において、1つの陳述書のみ、すなわち、青木教授の陳述書のみを包含し、鑑定証人との関係では権利を留保した。

8. 多数の手続的な指示がなされ、本件は、2008年4月30日水曜日及び5月1日木曜日に東京において聴聞審理されることが決まった。

9. 聴聞審理における当事者の代理人は、以下のとおりであった。
「上訴人」の代理人
弁護士 望月 浩一郎
弁護士 上柳 敏郎
弁護士 伊東 卓
弁護士 土井 香苗
弁護士 和田 恵

「相手方」の代理人
弁護士 原 秋彦
弁護士 野宮 拓

10. 聴聞審理においては、「上訴人」は3人の証人を申請した。

我那覇選手
川崎フロンターレのチームドクターたる後藤秀隆医師、及び

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター助教授であり、日本オリンピック委員会のドーピングコントロール委員会の委員たる大西祥平医師

11. 「相手方」は、2人の証人を申請した。

聖マリアンナ医科大学整形外科部長・教授であり、日本サッカー協会のスポーツ医学委員会の委員長であり、Jリーグのドーピングコントロール委員会の委員長であり、Jリーグチームドクター連絡協議会の座長であり代表たる青木治人医師、及び

日本の栃木県の自治医科大学の外科教授であるAllan Lefor教授

12. 両当事者は簡潔な冒頭陳述を行い、次に証人尋問が行われ、また、両当事者は、簡潔な最終陳述を行った。両当事者は、本件上訴において、それぞれの言い分を提出する機会が与えられていることを確認した。証人及び当事者の尋問を行い、当法廷は、紛争及び上訴に影響を与える事実は本裁定書の以下の段落に記載されているとおりであると認定した。


認定事実
13. 2007年4月20日金曜日、川崎フロンターレチーム及びそのサポートスタッフは、翌日の浦和レッドダイヤモンズとの試合の準備のために浦和市に移動した。ホテルにチェックイン後、我那覇選手は、具合が良くなかったため、夜にトレーナールームの後藤医師を訪ねた。我那覇選手は、後藤医師に対して、喉が痛むこと、下痢をわずらっており、倦怠感を感じることを述べた。後藤医師は、日本において一般に処方される感冒薬であるPLを2日分処方した。後藤医師は、我那覇選手のために維持され、サッカーヘルスメイト(「ヘルスメイト」)として知られる医療記録に、「のどの痛み・・・PL3p x 3」と記入した。

14. 「ヘルスメイト」は、選手の健康状態を管理するための、個々の選手についての診断及び治療の記録である。それは、通常は、川崎市麻生区片平に位置するチームの練習場に隣接するクラブハウス内にある川崎フロンターレ診療所において保管されている。この診療所は、医療法に基づき川崎市によって認可を受けており、医療行為を実施するための十分な診察器具及び薬が備え付けられている医療施設である。「ヘルスメイト」は、選手が行くところにはどこでも、選手と共に診療所の外に持ち出され得る。医者が診察をし、又は患者に治療をしたときは、日本の医師法に基づき診療記録を書かなければならない。後藤医師によって我那覇選手のために保持されていた「ヘルスメイト」は、医師法に基づく診療記録とみなされる。

15. 我那覇選手は、2007年4月21日土曜日に浦和レッドダイヤモンズとの試合に出場し、シーズンの最初のゴールを決めることに成功した。当時、我那覇選手は、前シーズンよりも得点を上げることができていないこと、また、先発メンバーのポジションを失うリスクを負っていることを考えていた。その結果として、出場を妨げることになったかもしれないいかなる弱みも隠そうと努めたと同人は述べた。我那覇選手は、選手交代まで87分間なんとかプレーした。同人は、下痢が続いており、食欲がなかったと述べた。

16. 2007年4月22日 日曜日には、試合も練習もなく、川崎フロンターレチームのメンバーは1日オフであった。我那覇選手は、下痢が続き何も食べられなかったと述べた。

17. 2007年4月23日月曜日、我那覇選手は午後2時30分から約2時間川崎フロンターレチームの練習に参加した。同人は依然として下痢と喉の痛みを有しており、練習後同人の健康状態は悪くなり、気分が悪くなった。同人は、練習場の隣の診療所で後藤医師に診察してもらうことを決めた。練習の間、同人は水分を摂ることが困難であった。同人は、通常およそ1500mlを摂取するが、このときは同人が練習の間に通常摂取する量のおよそ10分の1しか摂取することができなかったと述べた。

18. 診察の間、我那覇選手は後藤医師に対して、気分が不良であり、全身に倦怠感があること、食欲がなく、下痢、頭痛、のどの痛みがあり、全く水を飲むことができないことを述べた。後藤医師は、診察をし、「ヘルスメイト」に以下の記入をした。「全身倦怠感」、「食欲不振」、「下痢」、「気分不良」、「水分食事摂取困難」、「BT38.5℃」。後藤医師は、関節痛はないことを注記した。後藤医師は、「ヘルスメイト」に腹部の図を描き、我那覇選手が腹痛を訴えた腹部の下の左の範囲をマークして、同人の腸音が亢進している旨記入した。後藤医師は、咽頭上部の図を書き、我那覇選手はのどの痛みがあり、咽頭上部の中心部は赤く腫れていることを記入した。診察の結果、後藤医師は、我那覇選手は「感冒及び下痢」であると記入し、生理食塩水及びビタミンB1の静脈内注入を提案した。診療所には、生理食塩水の限られた100mlのパックしかなく、後藤医師は2、3の100mlパックを我那覇選手に注入して、我那覇選手の状態が改善したときには止めることを決めた。後藤医師は、最初生理食塩水のみの100mlの静脈内注入を実施し、それからビタミンB1を100mg加えた100mlの生理食塩水のボトルを次に注入した。この注入は約30分かかり、その後我那覇選手は気分が良くなり、水が飲めるような気がすると言い、注入を止めた。後藤医師は、証拠において、我那覇選手は脱水症状にあったため静脈内注入は必要であったと説明した。後藤医師は、「ヘルスメイト」において、同人が生理食塩水100mlを2パックと100mgのビタミンB1の静脈内注入を行った旨記入した。同人は、また、「患者はよくなったと述べている」と記録し、再び感冒薬であるPLとビオフェルミン1日につき3gを処方した。我那覇選手はそれから診療所を去り、車で帰宅した。

19. 2007年4月23日、後藤医師は、「ヘルスメイト」に記入をした後、診療所のコンピューターで川崎フロンターレチームマネージメント部へのレポートを作成した。このレポートは、施された治療を記載し、症状を記入し、「患者の明日(4月24日)の様子をみて今後の治療等を検討します」と結ばれていた。

20. その年の早い時期である2007年1月21日に「Jリーグチームドクター連絡協議会」の会議が招集された。会議において、青木医師は、静脈内注入が行われる全ての場合において「WADA規程」に基づき治療目的使用による免責(「TUE」)の申請書の提出が要求されると説明した。従って、後藤医師は、我那覇選手に対して行った静脈内注入についてJリーグにTUEを提出する必要があると理解していたが、診療所にTUE申請書がなかったので同人は翌日に完成させることを決めたと述べた。

21. 2007年4月24日火曜日の午前、後藤医師は、TUE申請書を保管していた関東労災病院において外来の患者の診察にあたっていた。同人は、午後、川崎フロンターレが試合のために等々力スタジアムで公式練習をしていたので、TUE申請書をもってそこに行った。後藤医師は、申請書をどのように記入するかにつきJリーグ事務局と相談し、記入後、我那覇に署名をさせ、同人はそれを川崎フロンターレのスタッフに渡して、Jリーグのオフィスにファックスするよう依頼した。その日の後になってから、同人は、Jリーグ事務局から診断書も提出するように言われた。5時頃、後藤医師は、診断を「感冒及び下痢」と記載した診断書をJリーグにファックスした。この内容が簡略でありすぎたために、青木医師は、Jリーグ事務局を通じて、後藤医師に対してより詳細な医学的理由を提出するよう要請した。それに応じて、後藤医師は、2007年4月25日に診断書の更なる写しを提出し、同人は、それに以下のとおり付記した。

「4月23日、上記による症状(発熱、咽頭痛、全身倦怠感、腹痛、食欲低下)を認めました。経口での水分、食事摂取困難なため、生理食塩水200mlとビタミンB1 100mgを経静脈的に投与しました。」


22. 2007年4月24日火曜日、サンケイスポーツという新聞紙に記事が掲載された。当該記事は、我那覇選手が「右足首負傷などにより不調が続」いていたが、全南戦に向けて秘密兵器を投入したと記載していた。記事は、我那覇選手は「疲労回復に効果があるニンニク注射」を受けたと記載していた。当法廷は、ニンニク注射は、主に疲労回復を促進するために用いられる、息がニンニクのような臭いになるビタミンB1の静脈内注入についての俗称であるとの説明を受けた。記事は、我那覇選手は、「連戦だし、やって損はない。臭うからあんまり近づかない方がいいですよ」と述べたと記載していた。我那覇選手は、ジャーナリストに対してこのような言葉を述べたことを否定したが、4月24日の新聞記事の報道後、川崎フロンターレは我那覇選手に等々力スタジアムで翌日に予定されていた全南戦でプレーしないことを求めた。

23. 2007年4月25日、Jリーグドーピングコントロール委員会委員長の青木医師は、書簡を川崎フロンターレにファックスした。書簡は医療行為のため以外の静脈内注入は禁止されていると述べ、新聞記事に関する報告を求めた。後藤医師は、2007年4月25日、関東労災病院において、我那覇選手から血液サンプルを採取した。テスト結果は、上述した状態及び医療行為と整合性を有しており、弱い炎症反応を示していた。

24. 2007年4月25日、川崎フロンターレは、青木医師に書簡を送り、川崎フロンターレとしては新聞報道の正確性は争わないものの、我那覇選手や後藤医師から直接の事情聴取をせずに静脈内注入の周辺事情を簡潔に記載した旨を表示した。後藤医師からのTUE申請書と診断書もまた同封されていた。書簡は、本件注入を実行した根拠を以下のとおり記載した。

「臨床的に感冒でかつ消化器症状を呈して、激しい肉体労働によりビタミンB1の需要が増大したのにもかかわらず、食欲不振で経口摂取不能のため経静脈的に生理食塩水とビタミンB1を投与。使用量に関しては生理食塩水200ml投与の時点で症状の改善傾向があったため終了としました。」


25. 2007年4月27日、ドーピングコントロール委員会委員長として、青木医師は、川崎フロンターレに対して書簡を送り、後藤医師と我那覇選手が川崎フロンターレの実行委員と共に2007年5月1日のJリーグドーピングコントロール委員会の会議に出席することを求めた。

26. 2007年5月1日、川崎フロンターレの社長、CEO及び実行委員である武田氏、後藤医師及び我那覇選手はドーピングコントロール委員会の委員との会合に出席した。会合の反訳録が記され本手続に証拠として提出された。会合の間、青木医師は、同人らが「一番気になる」(T5)ことは、本件治療及びビタミンB1と生理食塩水の実施が「本当に必要なもの」(T5)であったか否かであることを示した。同人は、会合において「先生のご判断はまあそれで必要で良いというふうに判断されたのだろうと思うんですけれども、言ってみればそれが本当に必要かつ不可欠なものであったか。あるいは有効であったのかどうかということは、やはり第三者がある程度判断しなきゃならない点もありますよね」(T5)と述べた。後藤医師は、会合において「治療が必要だと。[本件注入は]正当な医療行為だということで判断しましたので」(T10)と確認した。我那覇選手は、静脈内注入を受ける前に、後藤医師が治療について説明し、気分が悪いときに「点滴はやっても大丈夫」(T14)と述べた旨を確認した。我那覇選手は、「ドーピングに抵触するとは思わなかった」(T14)と言った。会合後、Jリーグドーピングコントロール委員会は討議し、本件注入は緊急且つ正当な医療行為ではないと結論付けた。

27. 2007年5月2日、「相手方」は、Eメールにて、武田氏宛てに、ドーピングコントロール委員会においてなされた決定の結果として、2007年5月7日火曜日にアンチ・ドーピング特別委員会の会議が開かれることを通知した。当該書簡は、ドーピングコントロール委員会での会合の反訳録が正確であることの確認を求め、また、2007年5月7日に「制裁案はJリーグアンチ・ドーピング特別委員会によって決定される[ことになる]」と記載していた。この書簡と内容は、我那覇選手に対しては宛てられておらず、また、渡されることもなかった。川崎フロンターレのCEOとして、武田氏は、2007年5月2日付書簡により返信し、議事録の正確さを確認し、また、「Jリーグアンチ・ドーピング特別委員会での弁明の機会も行使しないことをお伝え致します。」と通知した。

28. 2007年5月7日、アンチ・ドーピング特別委員会の会議が開かれた。川崎フロンターレ及び我那覇選手は出席しなかった(同選手は同会議について知らなかった)。当該会議は、川崎フロンターレと我那覇選手の両者に制裁を課すことを決めた。2007年5月8日、Jリーグの臨時理事会が招集され、制裁を課すためにアンチ・ドーピング特別委員会において採択された決定が承認された。それから川崎フロンターレは口頭で決定の通知を受けた。

29. 2007年5月10日、「相手方」は、以下の書簡を川崎フロンターレに送付した(別途の書簡は我那覇選手に対して送付されなかった)。

「貴クラブにかかる違反行為に対する制裁の種類および決定に関し、『Jリーグ規約 ドーピング禁止規程』第5条[1]の規定に基づき下記のとおり決定いたしましたので、本書をもってご通知いたします。なお、制裁金は、2007年6月29日までにJリーグ所定の銀行口座へお振り込み願います。

1. 制裁の内容
(1) 制裁対象 :川崎フロンターレ
  [1] 制裁の内容 :制裁金10,000,000円
  [2] 適用条項 :『2007 Jリーグ規約 ドーピング禁止規程』第5条〔罰則〕[3]

(2) 制裁対象 :我那覇和樹選手(川崎フロンターレ)
  [1] 制裁の内容 :6試合の公式試合出場停止処分
  [2] 適用条項 :『2007 Jリーグ規約 ドーピング禁止規程』第5条〔罰則〕[1]に基づき、同条[2]-(2) 一定期間の出場停止(1試合以上6試合以下の公式試合の出場資格の停止)を適用

2. 違反行為の内容
2007年4月23日、クラブハウスにおいて体調不良を訴えた我那覇選手に対し川崎フロンターレチームドクターの判断で静脈注射を実施した。当該治療は我那覇選手の健康状態に対し、緊急かつ合理的な医療行為とは認められないものであり、2007年5月1日開催のドーピングコントロール委員会にてドーピング禁止規程に抵触する行為であることが確認された。」(下線は当法廷による)


適用されるドーピング禁止規程
30. Jリーグの2007年の「ドーピング禁止規程」は、第2条1項において「WADA規程」に規定されているところの「ドーピング」の定義を採択している。第2条2項は、WADAにより「WADA規程」の何らかの修正がなされたときは、「相手方」の規程は自動的に変更される旨規定している。それに関連して、Jリーグの2007年の「ドーピング禁止規程」は、Jクラブ及びJクラブのいずれかに所属している個人が「何らかの方法で・・・直接又は間接にドーピングに関与すること」を禁止している。「WADA規程」によって定義されているドーピングは、常に「禁止方法の使用」を含むものであった。

31. 「WADA規程」は、ドーピングとみなされる物質及び方法の「禁止リスト」について言及している。「2006年禁止リスト」の「規則M2.b」は、「化学的・物理的操作」の見出しの下で、「緊急且つ正当な医療行為である場合を除いて、静脈内注入は禁止される」と規定する。

32. 2007年に、当該「規則」は変更され、「2007年禁止リスト」の「規則M2.b」は、「正当な医療行為である場合を除き、静脈内注入は禁止される」と規定していた。「2007年禁止リスト」によってなされた主要な変更点についてWADAによって発行された概要は、「この方法の医学目的での正当な使用は現場の医師に委ねられるため、『緊急の』という言葉は静脈内注入の段落から削除された」と規定している。

33. 主張されている違反行為の翌年である2008年、「禁止方法」の「規則M2」は再び変更され、現在は、「静脈内注入は禁止される。この方法が必要とみなされる緊急の医療状況においては、遡及的なTUEが要求されるものとする」と規定している。「2008年禁止リスト」によってなされた主要な変更点についてのWADAによって発行された概要は、「利害関係人からのコメントに基づき、この方法は緊急医療状況においてのみ使用し得るものであることを明確化するために文言を修正した。措置は、遡及的なTUEを取得することによって正当化されなければならない」から、「規則M2」の変更がなされたと規定している。


治療目的使用による免責(TUE)
34. 「WADA規程」第4.4項は、TUEの付与プロセスの国際水準をWADAが採用することを要求している。各国際連盟と各国のアンチ・ドーピング機構は、その法域内の全ての選手が「プロセスが実施され、それにより文書化された医療状況を伴って、禁止物質又は禁止方法の使用を要求する選手は治療目的使用の適用措置を要請することができる」ことを確実にする義務を負う。当該要請は、治療目的使用についての国際水準に従って評価されるものである。関連する国際水準の下では、TUEについての申請は、治療目的使用措置委員会(「TUEC」)によって審査される。TUECの国際水準6.1項の下では、以下のようになっている。

「[TUECは]少なくとも、選手の治療の経験と臨床的、スポーツ及び運動薬学の確かな知識を有する3人の医者を含むものとする。決定の独立性のレベルを確実にするために、TUECのメンバーの過半数は、アンチ・ドーピング機構のいかなる公式な責任も有するものであってはならない。」


35. さらに、国際水準(16(2)項)に基づき、TUECは、TUE申請の状況を審査するうえで同委員会が適当であるとみなす医学的又は科学的専門知識は何でも求めることができる。当該プロセスは、関係状況と医者による治療の徹底的な医学的再評価を意図するものである。このプロセスは、ドーピング違反があった旨の申立がある場合に引き続いて行われるプロセスとは全く区別されるものである。

36. TUEを付与する基準は、禁止物質又は禁止方法が、緊急の又は慢性の医療状況を治療する過程で留保された場合には、選手が、その健康に重大な毀損を経験するであろうことの要件を含む。さらに、禁止物質又は禁止方法の治療目的使用が、正当な医療状況の治療(4.3項)後に通常の健康状態に戻ることが予期されている以外には運動能力の強化がないことが要件である。また、さもなければ禁止されている物質又は方法(4.4項)の使用に関して合理的な治療代替手段がなく、さもなければ禁止されている物質又は方法の使用の必要性が、全部であれ部分的にであれ、禁止リストにある物質の従前の非治療的使用の結果としてのものではないものでなければならない。

37. 当該国際水準は、特別の状況においては、遡及的効果を有するTUE申請が許可され得ることを認めている。しかし、TUE申請書は、以下の場合(4.7項)を除いては、遡及的承認としてのものとはみなされない。

(a) 緊急の治療又は緊急の医療状況の治療が必要である場合、又は
(b) 例外的な状況のため、申請者が提出するか、TUECがドーピングコントロールの前の申請を考慮する十分な時間や機会がない場合。



CASの法的判断
38. 申立によれば正当な医療目的のものであったとしても、血液についての措置は、血液のドーピング、運動能力の向上又は禁止された物質若しくは方法を隠蔽するというような違法な目的のためのアリバイとして濫用されることがあり得る。静脈内注入の使用は、スポーツにおけるドーピングとの戦いにおいて類似の問題を引き起こす潜在性を有している。一定の医療行為であって、さもなければドーピングの定義に該当するであろうようなものを正当化することのできる条件は真に例外的なものであり、従って、一般論として、当該運動選手又は当該治療を実施する者によって立証されなければならない(Walter Mayer v IOC、CAS Award, 20 March 2003, at [74], CAS 2002/A398/390/391/392/393参照)。従前のCASによる裁定において、6つのテスト又は判断基準が静脈内注入のような一定の方法が正当な医療行為として認めることができるか否かを判定するために具体的に示されている。

一定の医療行為が正当なものであるか否かを判定するこれらの判断基準は、「禁止リスト」の「規則M2.b」が効力を生じる前にCASによって採択されたものであるが、医療行為の正当性が問題とされている場合における有用なガイドラインとして適用されてきている(Walter Mayer v IOC、CAS Award, 20 March 2003, at [74], CAS 2002/A398/390/391/392/ 393、及び、Johannes Eder v Ski Austria (CAS 2006/A/1102 at paragraphs [54] to [63]) 参照)。

39. 当該6つの基準とは、以下のとおりである:
(i) 当該医療行為が特定の選手の疾病又は負傷を治療するために必要なものでなければならないこと;
(ii) 所与の状況の下において、ドーピングの定義に該当しないような、効果的で代替的な治療方法が援用できなかったこと;
(iii) 当該医療行為が、当該選手の運動能力を高めることのできるものではないこと;
(iv) 当該医療行為に、当該選手の医学的診断が先行していること;
(v) 当該医療行為が、適格な医療担当者によって適切な医療上の環境においてきちんと施されたものであること。
(vi) 当該医療行為の十分な記録が保存されており、検査のために入手可能であること。


40. 本件においては、後藤医師は、本件注入が必要であり、経口摂取が困難であったので脱水症についての有効又は代替的な治療方法がなかったのであり、我那覇選手が困難ながら水を飲むことができたとしても、同人の下痢のために水分は吸収されなかったであろうという見解であった。後藤医師は、我那覇選手をすぐに車で帰宅させることを心配したと述べた。この見解は、大西医師によって支持された。他方、青木医師は、「ヘルスメイト」が脱水症という診断を記録していないことを述べた。同人は、「別の方法又は手段で足りたであろう」という見解であった。青木医師は、本件事情の下においては注入は必要ではなかったと述べた。レフォー医師は、適切な治療とは、何もしないで12時間から24時間様子を見ることだった、と述べた。我那覇選手の側からは、診療所の医師は、体調が悪化するまで待つことはできないこと、並びに、我那覇選手がその前の金曜日から下痢をすでにしていたこと、が申し立てられた。生理食塩水にビタミンB1を加えることは、2007年1月21日のJリーグのチームドクター会議において、受容し得る治療方法であるとして青木医師によって認知された。同医師は、当法廷における証拠上、本件患者が中程度の度合の脱水状態にあったとすれば、注入は適切であるかもしれないことを確認した。同人は、それが受容可能であったかもしれないが、ただ、本件においてはそうではなかったと考えた。レフォー医師もまた、生理食塩水の注入は脱水症について正当な医療行為であり得ることを認めながら、それは極端な事例においてのみそうであるということを述べた。「相手方」はまた、我那覇選手のような体格の者に対する200mlの生理食塩水及び100mgのビタミンB1の注入は、いかなる効果ももたらしそうなものではないことに焦点を当て、それがおよそ必要な治療とは考えることはできなかったことを申し立てた。「相手方」はまた、「ヘルスメイト」において脱水症についての何らの言及もなされていなかったことから、診断は、感冒及び下痢以上のものではなかったと論じた。「相手方」はまた、我那覇選手がトレーニング中に、少しかもしれないにしても一定の、水分を何とか摂取していたという事実を指摘した。「相手方」はまた、注入によるビタミンB1の投与を争い、同人が診療の最後にはPL顆粒とビオフェルミン錠剤を最終的には投与されたことから、ビタミンB1の錠剤を摂取することができたはずであることを示唆した。「相手方」は、後藤医師は、水分を経口で補給することを試みることができたはずであり、そうすべきであったこと、並びに、しばらくの間我那覇選手の体調を観察すべきであったことを認定するように当法廷に求めた。当事者間における争点は、本件医療行為に焦点が当てられており、我那覇選手が何をしたかあるいはしなかったかということに焦点が当てられているのではない。

41. 両当事者は、本件医療行為は我那覇選手の運動能力を高めることのできるものではなかったことについて合意している。さらに、我那覇選手側において、本件は、静脈内注入又は血液ドーピングに関する従前のCASの事案とは全く異なっているものであることが強調された。本件注入においては、ドーピング[ママ][訳注: 禁止物質のドーピングの趣旨か?]の疑いはなく、運動能力を高めることはなく、また、こそこそしたあるいは密かな行為がなされたものではないことが強調された。本件における事情は、2008年1月14日のFISAの「ドーピング審理パネル」によるLitvintchev, and Othersの事案のような事案とは全く異なっていた。本件においては、適切な同時的な記録が作成され且つ保持され、審問において入手可能な記録がなされているという、適切な医療的環境において選手がその担当医師から患者として治療を求めるという選手としての通常の過程において本件静脈内注入がなされたものであることが申し立てられた。

42. 「相手方」は、「相手方」の「ドーピングコントロール委員会」が本件治療の正当性を審査し、TUEを検討していた同委員会において提示された文書及び資料における不十分と見られる点を指摘することによって、十分な記録が保持されていたということについて争った。「ヘルスメイト」が2007年5月16日に「相手方」に対して初めて提出されたのは、やっと本件制裁が課された後になってからのことであった。しかしながら、本件においては、医師によって運動選手に対して施された医療行為の過程において、適切な診療記録において医師により同時的に当該治療について文書化がなされており、しかもそれは、同医師の専門的な診断に基づいていた。「相手方」が制裁を課するということを決定する前には、それは「相手方」にとって入手可能ではなかったものの、当法廷及び当事者らによって召喚された鑑定証人に対しては入手可能なものとされていた。残されている困難さは、当該治療が必要であったか、あるいは他の治療方法が利用可能であったか、ということについての医学的な鑑定証人の間における意見の不一致があることである。


争点
43. 我那覇側においては、本件治療が「2006年WADA規程」において記載されている「緊急の」医療行為には至っていないということに基づいて、「相手方」が制裁を課する決定をなしたということが申し立てられている。また、正当な医療行為についての判断は、当該患者を診察し、治療方法を処方し、治療方法を実施した特定の医師に委ねるべきであり、そうすることができるということが申し立てられた。代替的に、後藤医師による治療は、大西医師によって必要且つ適切であったと述べられた。我那覇側においては、「2007年WADA規程」においては当該判断は治療にあたる医師にとっての事柄であるということが、他のスポーツ関係機関及びアンチ・ドーピング機関によっても支持されているという見解が申し立てられた。当法廷は、当該治療にあたる医師の見解は相当の比重を付与されるべきではあるものの、治療にあたる医師の判断は、当法廷による「本件上訴」についての決定又は審査を先取りすることのできるものではない、と考える。本件手続は、2008年に本件事情が生じていたとすれば、国際的な基準によって規定された手続の下で、専門的な医療知識を有する、TUEについての申請を検討するというような審査パネルというような性質を有するものではないことを、当法廷は認識している。さらに、2007年において「相手方」及びその他の者によって適用されているアンチ・ドーピング規則について施された解釈がどのようなものであったにせよ、適用される規則の適切な意味を判断することは当法廷にとっての事柄である。2007年の終わりに再び当該規程が変更されたことに鑑みると、このことの重要性は低くなっている。

44. また、我那覇側においては、「相手方」によってなされた処分決定は、「WADA規程」第8条によって要求されている公正な聴聞についての権利を選手に与えるために必要な原則を遵守していないことが申し立てられた。我那覇選手は、自己の費用負担で弁護士によって代理される権利を実質的に否定され、且つ、同人が一定の申し立てられたドーピング違反についての公正で且つ適時の通知を受けず、制裁が課されるとすればいかなるものが課されるべきであるかについて対応し意見を述べる権利を与えられなかったことが主張された。CASの先例によって確立されているように、CASにおいて上訴審問が選手に対してなされる場合において、当法廷は、事実関係及び法律関係を審査する完全な権能を有しており、争われている処分決定に取って代わり、又は、当該決定を取り消し、もとの判断機関に対して差し戻しを命じる新たな決定を下すことができる(「本規則」第R57条)。上訴審問は、このように、第一審の審理手続において生じたかもしれない手続的な瑕疵を是正する機会を両当事者に対して与えている。


立証責任
45. アンチ・ドーピング政策の違反の全ての要素について、違反を申し立てる側が立証する責任がある。当事者間において、我那覇選手がその申し立てられている違反に対する例外又は抗弁を主張しているという意味において、同選手が本件治療が正当な医療行為であったことを立証する責任を有するか否かについて当事者間において争点が生じた(Walter Mayer v IOC、CAS Award, 20 March 2003, at [74], CAS 2002/A398/390/391/392/393参照)。我那覇選手側においては、違反を申し立てている当事者としての「相手方」がまず静脈内注入がなされたこと、並びに、それが特定の類型のものではなかったこと、即ち、それが正当な医療行為でなかったことについての立証責任を負うべきことが申し立てられた。本件争点についてのもう1つのあり得べき分析は、当該選手が当該治療は正当な医療行為であった旨の一定の証拠を当法廷に提出し、その結果として、当該証拠の趣旨に反論すべき立証上の負担が違反を主張する側の当事者について生じるか否かを検討することにある。結論として、それは「2007年WADA規程」及び「ドーピング禁止規程」の要件を解釈することであるというのが当法廷の見解である。

2007年において本件禁止方法は、「静脈内注入は、正当な医療行為の場合を除いて、禁止される」と記載されていた。対照的に、2008年のルールは、全ての静脈内注入が禁止されることを明確に示している。2008年において「規則M2」の最初のセンテンスは、「静脈内注入は禁止される」と書かれている。当該「規則」はまた、2つ目のセンテンスとして、「この方法が必要だと考えられる緊急の医学上の状況においては、遡及的なTUEが要求される」ということを含んでいる。「2008年禁止リスト」の文言によって施された変更は、実質的なものである。それは、2007年の文言とは明らかな違いをなしている。2008年の文言は、静脈内注入についての包括的な禁止を示しており、それが責任を追及する側の証明しなければならないことの全てである。「2007年WADA規程」の文言の下においては、静脈内注入がなされたこと並びにそれが正当な医療行為ではなかったことを違反を申し立てる側の当事者が立証しなければならない、というのが当法廷の見解である。


本件は、正当な医療行為ではない静脈内注入であったか?
46. 上述のとおり、治療にあたった医師の見解は、大きい重みを持ってはいるものの、この問題について決定的なものではない。また、その意見が大西医師のような別の医療専門家の支持を得ているということも決定的ではない。当法廷としては、青木医師及びレフォー医師によって反対の意見が表明されていることを注記しておく。2008年において申立に係る違反行為が生じていたとすれば、後藤医師及び我那覇選手は、当該治療の医学的な再評価を行うであろう独立の医療専門家機関からのTUEについての遡及的な承認を求めることを要求されていたことであろう。

47. 当法廷としては、本件の独特の全ての事情の下で本件静脈内注入が「2007年WADA規程」の意味において我那覇選手にとって正当な医療行為であったことを認容することについてはそういう意向になることもあるかもしれないところ、当法廷としては、その時点においてJリーグは制裁に関係する「WADA規程」の関係条項を採択していなかったことを注記しておく。

48. 本件注入時点において有効であり、本件手続において書証2.2として提出されたところのJリーグの「ドーピング禁止規程」は、第5.1条に基づき、「アンチ・ドーピング特別委員会」は「選手に対して制裁を科することができる」(下線は当法廷により付加されている)と規定している。第5.2条は、さらに、言及されているところの制裁の種類の例を示している。当法廷は、この規定の適切な解釈を検討し、当該条項の文言の下では、当該委員会が制裁を課する「ことができる」ものであることを注記しておく。懲罰を課すべき義務も要求も存在していない。懲罰を課する権限はあるものの、各々の違反について懲罰を課すべきという強制的な義務は、存在しない。本件においては、証拠及び相反する当事者らによる申立及び証人の審尋の慎重な評価の末、当法廷は、我那覇選手に対していかなる制裁も課すべきではないという事案であるということについて当法廷が納得しているために、違反行為があったか否かについて判断する必要はないという結論に達した。同人の行為は、何らかの制裁に値するものではない。「WADA規程」の関係条項において用いられている関係文言は不明確であり、当該条項は、その後改訂されている。2007年1月の会議において青木医師によってなされた説明は、十分に明確ではなかった。Jリーグは、何が正当な医療行為であるかを判断するための詳細な条件を、実体的にも手続的にも、具体的に示す十分な措置をとっていなかった。本件事情の下において静脈内注入の必要性についての相異なった医学的見解が証拠上存在していたのであり、且つ、今でも存在している。我那覇選手は、治療にあたる医師の専門的な判断を評価する能力を持ってはいなかった。我那覇選手は、治療にあたる医師による診療の記録及び報告をチェックする能力を持ってはいなかった。診療の記録及び報告がより完全であり、青木医師の主張しているような点において不十分でなかったとすれば、我那覇選手は、Jリーグの「ドーピング禁止規程」の違反の罪を問われることはなかったであろう。当法廷は、我那覇選手の行為は、何らかの制裁に値するものではないという見解であり、当法廷は、禁止された方法を使用し又は適用することによって、ドーピング違反を我那覇選手が犯したか否かについての結論に達する必要はない。禁止された方法を使用したことによってドーピング違反を犯したものであったとの結論に当法廷が達したとしても、同人には、何らの落ち度もない[no fault]ので、制裁を受けるべきではない。本件の独特の事実関係及び事情を考慮した末、当法廷は、我那覇選手は、全面的に帰責事由なしに[without fault]振る舞ったものであるとの結論に達した。「本件上訴」は認容されるものであり、我那覇選手に関する処分決定は破棄され、「上訴人」により要請されている救済措置が本書を以て付与される。

費用
49. CASの上訴仲裁部における手続の費用は、「本規則」の第R65条の適用を受ける。

50. 「本規則」の第R65条に基づき、当事者、証人、鑑定証人及び通訳の費用は、両当事者によって前払いされるべきものであり、当法廷は、その裁定において、いずれの当事者がそれらの費用を負担し、あるいは、いずれの当事者がそれらをどのような割合で分担するかについて、手続の結論並びに両当事者の行為及び財源を考慮に入れて、決定することになる。当法廷は、第R65条に言及されている事項を考慮し、「本件上訴」が認容され、「相手方」による処分決定が取り消されるということを注記しておく。

51. 全ての状況に基づき、当法廷は、以下のように決定する。
51.1 本件仲裁の、CASの法廷事務局により決定され送達されるところの本件仲裁の費用は、「相手方」によって負担されるものとする。
51.2 「相手方」は、本件仲裁手続の関係で「上訴人」が蒙った法的及びその他の費用について、20,000米ドルの金額を寄与的に負担するものとする。
51.3 「相手方」は、自己の費用を負担するものとする。



以上の理由に基づき



CASは、本書を以て以下のように決定する。

1. 「本件上訴」は認容され、「上訴人」が公式試合6試合から出場停止されるべきであるという2007年5月10日付の「相手方」により「上訴人」に対して課された制裁は、取り消される。

2
2.1 CAS法廷事務局によって決定され送達されるところの本件仲裁の費用は、「相手方」が負担するものとする。
2.2 「相手方」は、本件仲裁手続の関係で「上訴人」が蒙った法的及びその他の費用について20,000米ドルの金額を寄与的に負担するものとする。
2.3 「相手方」は、自己の費用を負担するものとする。
ローザンヌ 2008年5月26日
スポーツ仲裁裁判所

仲裁パネル委員長

Malcolm Holmes




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